あした
「だからなのよ・・・・」

「だから?」

「ええ・・・・マコ 高校の時は 陸上競技してたの。長距離走るのが得意だった・・・ 走るフォームがとても綺麗な子で、タイムも良かったから 
 大学から 誘いもあったのよ・・・・
 だけど、あの子ったら 自分は パン屋を開くのが夢だからなんて 
 急に言い出して 大学の誘いも断わっちゃったのよ。
 ランニングも辞めちゃって・・

 でも、そんなんだから足の調子がおかしくなるまでは 
 あそこの坂道登りきるなんて朝飯前だったのよ・・・・
 小さくてくだらない事だけど 彼の自慢だったの」

「足の痛みもたいしたことないって きかなかったんだが 
 今日は土曜日だったしね。嫌がっていたけど無理やり 検査に連れていったんだ。」

「えっ・・・・そのまま 入院って・・・・・」

「あの子・・・・骨肉腫だったの・・・・」

少し震える声で幸子が言った。

「良性か悪性かは 精密検査をしてみないとわからないんだが・・・
 退院させると 改めて検査にいくタマじゃないんでね・・・・」

それだけなんだろうか・・・・

美咲の中に不安な気持ちが広がった。

「あ・・・あの・・・・マコさんに会いに行ってもいいですか?」

「203号室よ。退屈してると思うから 行ってあげて頂戴。」
幸子が精一杯の笑顔で言った。



幸子と友紀人と別れて その足で病院へ向かう。


203号室 6人の大部屋の一番奥 窓際に誠のベッドはあった。

でも・・・・

本人不在。

何処へ行ったんだろう・・・・

探す当てもなく 病室を出たところへ 誠が戻ってきた。

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