あした
「簡単でいいんじゃない?」

「そうはいかない・・・・」

「だって・・・望んでそうなる人はいないし・・・・そんなこと考える余裕もなく
 そう言う状況になってしまう人もいるのだし・・・・」

「少なくとも 俺には選択時間が与えられた・・・・それってどういう意味か
 考えないか?」

「えっ?」

「命の長さを選ぶのか・・・・深さを選ぶのか・・・・」

「私は・・・・」

「私は?」

「マコさんに生きて欲しい・・・・・」

「どんな風でも生きて欲しい?それって 俺にとってみたら 結構きつい・・・
 結構しんどい・・・・それ わからない? 俺の意思はどうなるの?気持ちは
 置いてきぼり?」

「じゃぁ、そのままで 3ヶ月でいいの?それって 後に残される人の気持ち 
 考えてる?子供に 先立たれる親の悲しみの事考えてる?」

「いるさ!!だから・・・・だから 迷っているんだ・・・・」

少しイラついた口調で 誠が答えた。

【どちらを 選択しても 辛いんだ・・・・辛い現実を 昇華しないといけなんだ】

俯いた美咲の目から涙が伝い落ちた・・・・

命の交換ができるなら・・・・

自分の命と彼の命を交換してあげたいと心底思った・・・・

彼は1人息子・・・・

そして両親から愛されている・・・

私はそうじゃない・・・

優秀な姉もいる・・・・

自分なんて 多分 両親にとってみたら お荷物に違いない・・・・

何かの本で 読んだ事がある・・・・命が充電可能な電池ならよかったって

言った 不治の病で逝った少女の話

今は 痛いほど彼女の気持ちが良くわかる。

私の心臓の中にある 見えない命を 交換できるなら・・・・

私は マコさんに今すぐにでも 交換してあげるのに・・・・・

そんな風に 美咲が考え込んでいると誠が低い声で言った・・・・


「帰れよ。」

「えっ?」

「ご両親から逃げちゃ駄目だよ。」

「そういう マコさんだって・・・・」

「俺? 逃げてないよ。迷っているけど 逃げてない。」

毅然とした眼差しを美咲に向けて誠が言った。
< 42 / 135 >

この作品をシェア

pagetop