あした
「そうだな・・・・さすがに 応えているよ・・・・いきなり 3ヶ月だぜ・・・
参ったヨ・・・健康な時だって、考え方によったら 明日がわからないのにな・・・
いきなり 寿命がみえちゃうと、やっぱりショックだよ・・・・見えていいものと 見えない方がいいものって あるんだな・・・・」

深い溜息をついて 誠が俯いた。

【確かにそうだ・・・・寿命は 誰もが持ってるもの・・・・長い人もいれば
 短い人もいる・・・・でも、見えない・・・・】

辛そうな 誠の横顔を見て なんとか 慰めたいと美咲は思った。

なのに・・・言葉が見つからない・・・・

「俺、どうしていいのかわからないんだ・・・
 左足なんだけど・・・切っても ガンが転移してないとは言い切れないんだって・・・・」


「えっ?」

「左足切っても 寿命が延びないなら このまま過ごしたいし・・・・
でも、左足を切って 寿命が延びても 俺、両親の世話にならないと
生きていけないんじゃないかと思うと 老いてく 両親のこと考えるとつらいし・・・
八方ふさがりなんだ・・・・」

「明日と言う字は 明るい日ってかくんだぞって・・・マコさんが私に言ってくれた言葉でしょ?」

彼がこの前自分に言ってくれた 言葉を思い出して 美咲がとっさに言った。

「明日・・・・かぁ・・・・」

「ご両親は なんて?」

「そりゃ・・・・切れって・・・・」

「生きていて欲しいからでしょ?」

「うん」

「私も マコさんには 生きていて欲しい・・・・
 出会った時のマコさんのように 貪欲に生きていて欲しい。」

「貪欲・・・・に?」

「うん・・・」

「そっか・・・・」

その横顔に出会った時の強さを一瞬見たような気がした。

「1つ お願いがあるんだけど 聞いてくれるかな・・・」

「なに?」

「この足がなくなる前に1度 サイクリング行きたい。」

「えっ・・・でも、大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。」

それから 数日後 手術が施される前に 仮退院をした誠は美咲を連れ立って

サイクリングに出かけた。
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