あした
病院へ入っていくと ロビーで幸子が 友紀人の胸に顔を埋めて
泣いているのが目に入った。

見てはならないものを見てしまったような気がした。

知らないふりをして 誠の病室へ向う・・・・・

誠の姿が見えない・・・・

「あれ? どこへ行ったんだろう・・・・」

誠のベッドの所で きょろきょろしている美咲をみて 隣のベッドの患者が言った

「ああ、芦田さんなら ケアホームの ばーちゃんに誘われて 今しがたでていきましたよ。 あの ばーさん よっぽど 芦田さんの事気に入ったのか、一日に何回も会いに来るんですよ。 面白いですよ、惚けてるんだろうけど 彼の事 一生懸命 口説いているんですよ。でも、彼も関心だな 若いのに嫌な顔しないで 良く相手してますよ。
将来は ホームヘルパーにでもなろうかな・・・なんて言ってましたが・・・・」


「あ・・・そうですか ありがとうございます。」

【パン屋になる夢はどうしたんだよ・・・】
彼の心変わりに少し戸惑いながら 美咲は頭を下げると病室を後にした。


共有スペースの広場に行くと 誠がポツンと1人でベンチに座り込んで

空を見ていた。

「ま・・・・マコ・・・・・・・さぁん」

ベンチの背後に回りこんで 美咲が声をかけた

不意をつかれ 振り向いた 誠の顔は泣き顔だった・・・・

ロビーで泣いていた幸子の姿が誠の泣き顔にオーバーラップした。
< 52 / 135 >

この作品をシェア

pagetop