あした
宣告され 限られた時間・・・・

泣いて過ごしても 笑って過ごしても 同じ時間・・・

不幸を嘆いて 過ごしても 同じ時間・・・・

ならば 残された者達の 心の風景の中で 自分は微笑んでいたい・・・・

輝いていたい・・・・

誠の中で 大きく何かが 変った・・・・・



その日を境に 誠から 暗い表情が消えた。

いつも 穏やかな微笑を浮かべている 誠をみて 幸子が言った。

「マコ・・・・」

「うん?」

「手術 受けるの?」

「受けるよ。どうして?」

「いいの?」

「組織の壊死が進んでいるんだろ?仕方ないよ。」

「でも。。。」

「残された時間が変るわけじゃない?そういいたいんだろ?」

「おまえ、無理してない?泣きたきゃ 泣いていいのに・・・・」

「お袋の前で?」

「えっ・・・・う・・・うん・・・」

「嫌だね。」

「なんで?」

「お袋の心の風景の中に 泣き虫の俺の姿なんて 残したくない!!」

「まこと・・・・おまえ・・・」

「でもさ・・・・1つだけ 俺 お袋と親父に悪いと思ってることがある」

「なに?」

「お袋と親父が ばばぁとじじぃになったとき 世話してやれない。」

「そんなこと・・・・どうせ 私もお父さんも惚けて 息子がいた事すら
忘れちゃうんだろうから・・・・気にしないの」

そう言って 無理して微笑んだ 幸子の目から涙がこぼれた。

「そうだな・・・できれば 早く その辺りは ボケきてほしいかな。」

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