あした
老いて、過去と現実が交差した世界で生きているお年寄り・・・・

ヘルパーの事を 小枝子さんと呼んだのは・・・・

彼女が 昔どんな形で関わった人なのだろうか・・・・・

俺の事を 色んな呼び名で呼ぶ多恵さん・・・・

その時 多恵さんは どんな時代のどんな時の彼女になっているんだろう・・・

幸せな時に戻っていてくれればいいんだけどな・・・・

でも、今、美咲ちゃんに花束を渡した時の 思い出はあまり 

いい思い出ではなさそうだな・・・・

親父とお袋も 老いて あの老人のようになったとき 俺は どんな形で

両親の元に現れるんだろう・・・・

いい思い出の中で 現れたいなぁ・・・・

そんな 思いで 誠は多恵の後姿見ていた。


マコの事を 色んな男性の名前で呼ぶ 多恵さん・・・・


私も歳を取って こんな風に なったとき・・・・


きっと 誠さんの名前・・・・呼ぶんだろうな・・・・

自分よりずっと若い男の子捕まえて「マコ。」とか呼んじゃって・・・・

自転車直せって言うのかな・・・・

それとも これから 私の心の中の風景に残るマコの思い出をみちゃったりするのかな


こんな風に 年老いて 自分だけ勝手に過去にタイムスリップしているお年寄り。

周囲の人間を巻き込んで 不幸なのだとばかり思ってきた・・・・

でも、マコと触れ合う多恵さんを見て もしかして 老いて行くことは

不幸な事ばかりではないのかもしれないと思えた。


「さてと、講習会いきますかぁ!!」

美咲が誠の車椅子を 押して エレベーターに向かって歩いていく。

そんな 2人の後姿を見ている 幸子・・・・

美咲がウエディングドレスを身にまとった花嫁姿にリンクする。

「せめて そんな風に 想像するの・・・美咲ちゃん 許してね・・・・」

そう呟いて 俯いた。


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