あした
そんな 2人の背後から 幸子が声をかけたきた。

「ほら・・・こんな所で 2人だけの世界に嵌ってる。」

「お袋。」

「どう?私も 美咲ちゃんに負けず 劣らず 浴衣 似合っているでしょ?」

そういいながら 幸子がポーズをとって おどけてみせた。

「親父は?」

「折角の 夏祭りの屋台に ビールがないんじゃって・・・外に買出しにいってるわ
 ここは 病院だっていうのに・・・・困ったもんね。」

「えっ・・・・でも、怒られません?」

「そうね。 隠れても飲みたいんじゃない?それより はい。食べない?」

そう言いながら たこ焼きを2人の前に差し出す。

「俺は・・・・」 食欲のない誠が断わった。

「マコ リバースしてもいいから 一口だけ 食べてみよう。
 屋台の味だよ。」

そう言いながら 美咲が たこ焼きを1つ 楊枝にさすと ふ~ふ~とふいた。

仕方なく 一口 かじってみる・・・・

ごくん・・・と 飲み込んだとたん 胃が激しく拒否反応を示した。

あわてて口を手にあてた 誠の背中を美咲が摩った。

幸子が タオルを 誠に差し出した・・・



「人の食い物なのに 俺の胃袋 受付てくれねぇや・・・・」

タオルで口を拭いながら涙目の 誠が呟いた・・・・

でも これは 受け付けるよね。

「えっ?」

そう言って 顔を上げた誠の唇に 美咲が唇を重ねた。



誰が見てようが 関係ないと美咲も誠も思った・・・・

「あら・・・・母親の見てる目の前で大胆な事。」

唇を重ねる 2人の姿をみて 幸子が苦笑した。

花火の下で唇を重ねる美咲と誠の姿が 幸子には

とてもはかなげに映った。



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