雨が降ったら
手渡された物と同じ、まるで――
そう、今日の空のような淡い空色の便せんが、収まっていたのである。
両方を取り出して、ボタンを握りしめたまま、わたしはふるえる手で手紙を開けた。
やや角張った字が並ぶ。
何度も読んだ手紙の字体とそれらはよく似ていた。
差出人はやはり森田岳――彼だった。
内容は、名前も知らないわたしに二度も手紙を書く無礼を許して欲しいこと、
バスのルートが変わることを調べもせず、返事をくれと頼んで悪かったこと。
そして、同日自分も無事に卒業を迎えたこと。
と、そこから続く文章にわたしは目を留めた。
(この町を、去る………)
父親の転勤に伴い、自身もこの町を出る決意をしたと、手紙には記されていた。
高校受験はなんとか滑り込むことが叶い、来年度からそちらの学校に通い始めると。
『もうあのバスに乗る機会はないので、せめてお詫びの言葉だけでも伝えたいと思い、運転手さんにこの手紙を託しました』