雨が降ったら
その翌日。
胸を高鳴らせながらカーテンを開ける。
愕然とした。
そこには予想とはおおきくかけ離れた、目映いばかりの光景が広がっていた。
昨夜遅くまで降り続いた雨が嘘のように、見事な快晴がわたしを迎えてくれたのである。
「遅刻するわよ、早く行きなさい」
カーテンを掴んだまま窓の前で立ち尽くすわたしの背中を母は容赦なく叩いて、
『さっさと朝ご飯たべちゃいなさい』と急かした。
晴れの日は自転車で行くこと。
それがルール。
無駄にお小遣を使ってはならない。
学校の自分の席でカバンを開く。
ファイルの中、先生に渡す提出物とは明らかに違う封筒があった。
バスの彼宛に書いた手紙だ。
きっと雨が降るとわたしの中では決まっていたから、前以て入れておいたのだ。
しかし。
……渡せなかった。
次の日も、その次の日もそのまた次の日も、
空は目が痛いほどの青色に染まっていた。
返事を渡す機会はなかなか思うようには訪れてくれなかった。
――待ちに待った雨がようやく町を濡らしたのは、彼に手紙をもらってから半月ほどが経ってからのことであった。