狼彼女のお気に入り
「ふぅ…」
びしょ濡れになった制服を脱いで着替える。
ブレザーはさすがに洗えないから、干すしかないが…
脱いだものを洗濯に回してから、もう一度深くため息をついた。
椅子に腰掛ける。
ふと、携帯を取り出した。
無意味に携帯を開け閉めしては、ため息をつく。
何もしていないと、余計なことを思ってしまう。
ったく………俺はどうしたって言うんだ。
今日はおかしい。
「お兄ちゃん、ご飯ができましたよ〜」
「あぁ。」
あれは篠田じゃなかったんだ。
見知らぬ通りがかりの人。
俺の勘違いだったんだ。
今日は何もなかったんだ。
必死にそう、自分に言い聞かせて、無理矢理、笑顔を浮かべた。