狼彼女のお気に入り
「……誰」
次の瞬間に待っていたのは
俺の想像とは違う
冷淡に染まった、篠田の声だった。
目を開けると、廊下の先を睨む篠田がいた。
「…誰」
誰かいるらしい。
でも、俺には人影さえ見えない。
「誰かいる、のか…?」
俺の問いかけに答えることなく、篠田はスッと立ち上がった。
相変わらず篠田はずっと睨み続けているが、誰も出て来ない。
篠田も諦めたのか、小さくため息をついた。
「……三階女子トイレのゴミ箱」
「は…?」
「会長の探し物。きっとそこにあるわ。」
あ…テストか
三階の女子トイレのゴミ箱だな……よし。
「っておい、いいのか?………あれ?」
篠…田?
篠田は廊下の角で曲がってから、顔を覗かせた。
「会長にお客様じゃない?」
「え?俺?」
「可愛い番犬ちゃん、…ってとこかしら?」
番犬…?
「わっ…ちょっ……憐先輩っ…?!」