狼彼女のお気に入り
「か、会長っ…!ま、待ってくださいよ…」
「あ…すまん…」
つい、引っ張っていた柴原の手を慌てて離す。
柴原はそこで立ち止まった。
どうしたらいいのか分からずに、そのまま俺も立ち止まる。
「会長…ごめんなさい」
「なぜ謝る。」
「だって、その…私…」
「あんなの嘘に決まってんだろ。真に受けてどうする。」
「えぇっ?!そ、そうなんですか?!」
やっと分かったか。
俺は、驚いている柴原の横で安堵の息をついた。
今度はさっきと違うけれど、やっぱりおろおろしている柴原。
俺は落ちつけるように肩に手をのせた。
……はずだったのに、柴原は益々、動揺している。
ったく、本当忙しいやつだな…
何故だかそれでも嫌な気分ではなく、少し頬が緩んだ。
「…よし、三階行くぞ。」
「は、はいっ…!」