狼彼女のお気に入り
嫉妬の後の
「礼をしたい。」
俺がこう言うのはこれで何回目だろう?
勿論、相手は篠田。
この前のテストの件。
結局、犯人は自分から名乗り出ては来なかった。
でも、無事にテストを終えることが出来た。
それは紛れもなく篠田のおかげなのだから、礼をしたいのだが…
「いらない。」
「だが…」
「いらないから。」
篠田は「いらない」の一点張り。
まぁ、大して礼を出来ることもないのだが…
どうも貸しをつくっているようで、なんとなく居心地が悪い。
「……会長ってホント、ずるいよね。」
「は?」
「いつもはあんなにグチグチ怒ってるくせに、こういう時だけ礼がしたいなんて、優しくなっちゃってさ。ずるいよ。」
ず、ずるいって…
そんなこと言われてもな…
大体、俺自身は、そんなに怒ってるつもりはないのだが……
「ど、どうすればいいんだ?」
「優しくして。」
「いや、だから…」
「これから一週間、皆に怒らない、睨まない、優しくすること。これがあたしへのお礼ね。」
「あのな、俺はそういう…」
「じゃ、頑張ってね♪」
「あっ!おい、ちょっ…!!」