狼彼女のお気に入り
「まぁ、そこが翔らしいとこでもあるんだがな。」
一応、誉められているんだろうか…?
なんとも言えずに苦笑いを浮かべる。
「そんなことより、今日は午前で授業は終わりだろ?早く行かなくていいのか?」
「あ、おう。行ってくる。」
「行ってらっしゃーい♪」
何故だかものすごくご機嫌な優太に遠慮がちに手を振り返して、俺は生徒会室へと向かった。
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「か、会長ぉー…」
「なんだ柴原か。どうした?」
「明日、テストじゃないですかっ!それで…」
この今にも泣きそうな女が、柴原芽依。
俺の一つ下の後輩で、今はこう見えても生徒会の大事な副会長だ。
仕事へ取り組む態度はいたって真面目で言うことはないのだが…
何しろ気が弱い。
生徒会メンバーからいじられ
クラスでいじられ
挙げ句の果てには、妹からもいじられていると聞いたことがある。
「今回のテストを落としちゃったら…」
「補習、だな。」
「そんなの無理ですよぉ…今月は生徒会の仕事も忙しいのに…」
確かに今月は忙しい。
何しろ、生徒会主催で体育祭をやることになったのだ。
実は今まで、柳蘭には体育祭がなかった。…というのも、女子だけでは今一、盛り上がりにかけるからだそうだ。
しかし!今年は徹底的に盛り上げていく為にも、来年度の男子の新入生を増やす為にも、この体育祭という行事はかなり重要事項になる。
何とか無事に終えられればいいのだが…
「…わかった。今日は帰っていい。」
「ほ、本当ですか…?!」
「あぁ。…皆も今日は帰っていいぞ。お疲れ様。」
「「「あ、ありがとうございます!!」」」
皆、柴原と同じことを思っていたらしく、俺が帰っていいと言うとホッとしたような顔を浮かべて、帰って行った。