狼彼女のお気に入り
声のした方に振り向いた。
「篠田…?!ちょっ、引っ張るなって!!」
「……いいから黙って着いて来なさいよ」
キッと睨まれて、俺はどうすることも出来ずに、黙って篠田に着いていく。
前を歩く篠田の表情を伺うことは出来ないが、相当キレているようだった。
たぶん、俺が何かしたんだろう。
………記憶にないが。
篠田の歩みは緩むことなく、三階北校舎の備品室前に来た。
この教室もそうだが、基本的に北校舎は人があまりこない。
というか、ほとんど使われていない教室が多いのだ。
俺でさえ、この教室には一回しか入ったことがない。
「あ、おい…入るのか?」
「……。」
答えない。
それでも篠田のもう片方の手は、しっかりと扉を開けていた。
そのままスタスタと中に入っていく篠田の後に続いて、俺も教室に入った。