狼彼女のお気に入り
「……。」
「……。」
教室に入り、握られたままの手はどうすることも出来ずに、篠田が座った床の隣に座る。
そこまではいいとしよう。
問題なのはそこからだ。
篠田が何にキレているのか分からないのに、無闇に話しかけるのは気がひける。
かといって俺からいきなり謝るというのも、何だかおかしい。
横目で篠田の様子を確認しても、さっきほどキレているようには見られない。
とにかくさっきはあの女達から助けてもらったんだし…
礼は言っておくべきだろう。
「し…篠田。さっきは助かっ…」
「……おもしろくない。」
「──は?」
おもしろくない…?
唖然としてしまった俺の目の前に篠田が来た。
「おもしろくないよ、会長。」
「いや、だから…」
さっきから何を言っているんだ、こいつは…
意味が分からない。