狼彼女のお気に入り
「あ、あのな…」
「………ムカつく。」
「っ…」
とくん─
心臓が波打って、体が熱くなる。
『ムカつく』
そう言いながらも、篠田は微かに笑っているように見えた。
解放された手も、どこか宙を漂って落ち着かない。
「あたし……欲しいものは全て手に入れたいの。」
「篠田…お前さっきから何を…」
「…わからない?」
ぐっと近づく距離。
篠田の華奢な指が俺の首元を撫でる。
俺は逃げようと後ろに下がるが、すぐに冷たい壁にぶつかった。
逃げられない───
そう確信した。
俺の足と足の間に篠田がいる。
何なんだ、この状況は……
せめてなら、とキッと睨んでみるが残念ながら、効果があったようには思えない。
「───会長が欲しいよ」
次の瞬間には、何故か寂しそうに笑う篠田がいて…
唇が重なった。