狼彼女のお気に入り
さっきまで会長が座っていた壁に触れる。
「……ごめんね、会長」
本当はこんなことがしたかった訳じゃなかった。
体育祭なんて…
そんな下らない行事でも、会長がいれば楽しめそうな気がしたから。
…でも。
そんな会長に
ほんの少しだけ、意地悪したくなった。
“優しくすること”
冗談のつもりだった。
会長に優しくしろ、なんて無理難題を言ったら、どんな風な顔をするんだろう?
それだけが知りたかったのに…
「会長、体育祭のダンス踊ってくれるかな〜」
「無理でしょ。」
「でも昨日の会長、すっごく優しかったよね?」
「じゃあいけるかな?」
そんな会話が耳に入ってきた。
あたしの冗談を、会長は守ってる。
優しくなんて………
しなくていい。
そう思ったら、身体が勝手に動いていた。
気がついた時には、会長の腕を掴んで、空き教室まで来ていた。