狼彼女のお気に入り
さて……俺もそろそろ行かなきゃな。
ブレザーを羽織って、生徒会室を出た時だった。
「っ…」
廊下の奥から変な音が聞こえた。
何かが床に落ちる音なんだろうけど…
それにしては人影が見えないなんておかしい。
「誰かいるのか?」
俺の声だけが廊下に響いた。
やっぱりおかしい。
さっき音が聞こえた方へと歩き出した。
「った…っ!」
角を曲がった瞬間、角の向こうから人が飛び出してきた。
避けきることが出来ずにぶつかってしまった相手に謝る。
「すまない。大丈夫か?」
「か…会長……っ………ご、ごめんなさい…」
「あっ、おい…!」
なんだあいつ…
ぶつかった相手は男だった。
制服から見て……1年か。
うちの高校は制服のリボン、ネクタイの色で学年が分かるようになっている。
1年は赤
2年はピンク
3年はオレンジ
仕方ないと言えば仕方ないのだが、元女子高のせいか、基本的に制服が女っぽい。
しかし何なんだあいつ…
妙に焦っていたし、あの制服……
まるで急いで着たかのように、ボタンが一つずつずれていた。
あきらかに不自然すぎるよな。
俺は男が出てきた角を曲がった。