狼彼女のお気に入り



さて……俺もそろそろ行かなきゃな。



ブレザーを羽織って、生徒会室を出た時だった。



「っ…」



廊下の奥から変な音が聞こえた。



何かが床に落ちる音なんだろうけど…



それにしては人影が見えないなんておかしい。



「誰かいるのか?」



俺の声だけが廊下に響いた。



やっぱりおかしい。



さっき音が聞こえた方へと歩き出した。



「った…っ!」



角を曲がった瞬間、角の向こうから人が飛び出してきた。



避けきることが出来ずにぶつかってしまった相手に謝る。



「すまない。大丈夫か?」


「か…会長……っ………ご、ごめんなさい…」


「あっ、おい…!」



なんだあいつ…



ぶつかった相手は男だった。


制服から見て……1年か。



うちの高校は制服のリボン、ネクタイの色で学年が分かるようになっている。



1年は赤


2年はピンク


3年はオレンジ



仕方ないと言えば仕方ないのだが、元女子高のせいか、基本的に制服が女っぽい。



しかし何なんだあいつ…



妙に焦っていたし、あの制服……



まるで急いで着たかのように、ボタンが一つずつずれていた。



あきらかに不自然すぎるよな。



俺は男が出てきた角を曲がった。







< 4 / 77 >

この作品をシェア

pagetop