狼彼女のお気に入り
波乱の体育祭
今日は体育祭当日。
あれから、何だか気まずくて、篠田とは話していない。
それに、目が合っても、篠田から話しかけてくることもない。
ぞろぞろと生徒が集まり出している校庭を見回してみるが、篠田の姿はなかった。
ホッとしたような、残念なような…
「会長っ、最終打ち合わせがしたいそうです!」
「あぁ、今行く。」
柴原の声が遠くから聞こえた。
返事をしながらも、俺の足はあまり気乗りしないのか、なかなか前に進まない。
こんなことじゃ…だめ、だよな。
わかっていても、もう一度校庭を見回して、ため息をついた。
「…翔!」
「ん?恵介…?」
「ちょっと。」
「あ、あぁ…わかった。少し待ってくれ。」
なんだろう?
校舎の影から、恵介が顔を覗かせている。
たぶん、大事な話なんだろう…
恵介の顔が少し曇っていた気がする。
俺は急いで柴原がいるテントの下に向かった。