狼彼女のお気に入り
優太は俺に抱きついたまま、小さくなっている。
この状況にどうしたらいいのか分からずに、とりあえず優太の頭を撫でてみる。
小さく震える優太の動きが一瞬止まって、顔を上げた。
「しょ…翔くぅ…ん…!!」
…泣き出した。
一体どうしたんだよ、こいつは…
本当にこいつは高2なのか?
そんな疑問が頭をよぎったが、目の前で実際泣いている優太に、そんなことを言えるほど、俺だって鬼じゃない。
とにかく、この目の前にいる不可解ないきものは置いておくことにして…
優太の背中側にいる恵介に視線を送る。
すると、恵介は呆れたようにため息をついてから、案外すんなりと優太を持ち上げて、俺から引き離した。
「わぁーん…っ!!恵介君の馬鹿ぁ〜!!」
「いい加減泣きやめよ。お前、それでも高2か?」
い…言った…!
恵介は俺が思っていた疑問を何食わぬ顔で言ってしまった。
やっぱり、恵介が一番冷静だな…と考えながら、優太を慰めてみる。
「ゆ、優太…?あまり気にするなよ…?」
「うぐ…っ」
まだ目に涙を溜めているが、どうやら泣き止んだらしい。
優太の拳がわなわなと揺れているのは見なかったことにして、一人、安堵の息をつく。