狼彼女のお気に入り
「さっすが翔君ッ♪」
「翔、迷惑をかけてすまない。」
「気にするな。というか寧ろ、頼ってくれて嬉しいぐらいだ。」
そうか、と恵介は安心したように微笑んだ。
優太が横に来て俺の手を握った。
「…へへッ♪」
やっぱり、この嬉しそうな笑顔を見るためだったら、少しくらいの無茶もいいと思う。
俺は優太の手を握り返して、ふぅ…と息をはいた。
体育祭で走らないなんて、かなり無茶な注文だとしか言えないのだが…
そんなことは関係ない。
優太が喜んでくれれば。
いや、少しでも体育祭が良い思い出になれば。
それが、生徒会長であり、優太と恵介の親友である俺のやるべきことだ。
安心した優太がクラスメイトの下に行ったのを確認して、俺も止まっていた足を動かし始めた。
「…翔」
「ん?」
「大丈夫なのか?」
「あ?あぁ、大丈夫だ。基本、競技はクラスごとに自由参加だからな。俺が何とかカバーするよ。」
「いや、そうじゃなくて。」
そうじゃない?
少し秘密めいたような笑みを浮かべる恵介に、俺は首をかしげた。