狼彼女のお気に入り
元から茶色の胸までかかる髪。
化粧はしていないのにくっきりとした顔立ち。
日焼けを知らないかのような白い肌。
大きく開いた胸元。
「お前…」
「ん〜」
大きく伸びをするこの女。
篠田憐。
理解不能な女の中でも、特に理解できない。
おまけにかなりの問題児だ。
「あ、会長。」
成績はいつも学年トップ。
スポーツはもちろん、男女共に慕われている。
ただ…“ある意味”では問題児でもある。
篠田は今まで俺の存在に気付いていなかったらしく、今さら素っ頓狂な声をあげた。
「お前、何してたんだよ。」
「そういう会長こそ……こんなところで覗き?」
「は?」
「あれ、見てなかったの?」
「だから何が?」
「後輩クンを襲ってるとこ。」
篠田はそう、平然と言いのけて下に落ちている鞄を拾った。
さっきの音の正体はこれか。……ってそうじゃなくて
「お前…お、襲うってな…」
「篠田憐。」
「は…」
「あたしの名前。…お前じゃないから。」
「はぁ……篠田、さっき飛び出してきた男は知り合いか?」
「さぁ?どうだろ。」
「おいっ篠田?!」
少し乱れていたブレザーの襟を直して、そのまま何も言わずに去っていった。
相変わらず意味の分からない女だ。
決して悪いやつではないのだろうが…
「ふぅ…」
あの男と篠田に何があったのかは気になるが…
そろそろ時間がやばい。
急がないと遅れるかもしれない。
俺も走ってその場を立ち去った。
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