狼彼女のお気に入り
「…よし、ゲット!」
タイムセールでゲットしたかぼちゃを手に、小さくガッツポーズを決める。
俺は3人家族の長男。
ちょっと頼りない父さんと、頼りがいのありすぎる妹。
母さんは………俺がまだ小さかった頃にどこかへ行った。
…俺達を捨てて。
一番頼れるはずの女に裏切られた。
だから女は嫌いだ。
「お兄ちゃん、ぼーっとしてないでくださいな。次は卵ですよ。レッツラゴー」
「はいはい。わかってるよ。」
妹の愛奈は中学1年。
その割には変に大人びている…と思う。
生徒会で仕事が出来ているのも、愛奈が家事を全て引き受けてくれているからだ。
本当に、感謝している。
「今日はコロッケにしましょーか、それとも天ぷらにしましょーか。ね、お兄ちゃん?」
愛奈がスーパーのチラシを見ながら、そう俺に聞く。
少しでも役にたてばと思い、毎日、近所で一番安いスーパーに寄って、買い物をして帰るのは俺の役目。
でも今日は愛奈が欲しいものがあるというから、一緒に買い物をしている。
「愛奈が好きな方で良いよ。」
「じゃあ天ぷらですね〜」
特売の品を確認しながら夕飯のメニューを決める愛奈は、我が妹ながらしっかりしていると感じる。
「あと、天ぷら粉だけ買えば終わりですよ。」
「わかった。愛奈は先にこれ持って帰っとけ。」
「アイアイサー★」
俺は愛奈がスーパーを出たのを確認してから、レジに並んだ。