狼彼女のお気に入り



「っ…」



マイクを握った瞬間、篠田と目が合う。



…初めてだ。



途中からとは言っても、篠田がこうやって、競技に参加しているのは。



よく考えてみると、今までずっとさぼっていた篠田が、こうしてここにいることは、とてつもなくすごいことな気がしてくる。



俺の胸の中には、嬉しいような、少し恥ずかしいような思いが同時に入り混ざる。



「い…いよいよ最後の競技です。皆──」



少し上ずった俺の声が校庭に響いて、いよいよ全校ダンスが始まった。



ダンス、と言ってもあまり堅苦しいものじゃない。



要するにフォークダンスのようなものなのだ。



そのせいか校庭を見渡すと、皆の顔には楽しそうな笑みが浮かんでいる。



良かった…



頑張って準備してきたかいがある。




安堵の息が漏れて、ホッと胸を撫で下ろした。









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