狼彼女のお気に入り
大体、“一緒に踊りたい”だなんて、俺が篠田を好きみたいじゃないか。
篠田から頼まれて踊るならまだしも、俺から誘うなんて……な。
そ、それに俺のキャラじゃない。
必死に首を横に振って誤魔化す。
「……冗談、だから。そんなに真に受けないでよ。」
篠田がへらっと笑って俺に背を向けた。
「………待て、っ…」
何故なのか。
その横顔が儚げに見えて……
考えるよりも先に、俺の手が篠田の腕を掴んでいた。
「待て、っよ…」
「…会長?」
「お、俺はっ……昼にお前を誘いに行ったんだ…!」
それなのに、いつの間にかいなくなってて。
あの時ほんの少し落ち込んだ……
…って俺なに言ってんだよ……!!
言ってしまったものは仕方がないが、恥ずかしくて顔を背ける。
チラッと目線だけ向けてみれば、一瞬だけ驚いた顔をした篠田と目が合った。