狼彼女のお気に入り
結局、俺は深刻そうな柴原の顔に負けて、放課後の生徒会室に残っていた。
ぱらぱらと意味もなくページをめくる。
俺の手元にあるのは今日完成したばかりの夏休みの冊子。
どうせ読まないで捨てるやつが大半なんだが、少しでも読んでくれるように、とカラフルに作ってある。
そういえばこのアイデアを言い出したのは柴原だったな…
そんな考えに浸っていると、柴原が無言で戻ってきた。
「柴原、どうした?」
俺が声をかけると少しだけ寂しそうに笑った。
「………私、今の自分が少し嫌いです。」
「え?」
「素直に笑ってあげられない自分が嫌いです。
でも
悩んでいる会長はもっと嫌いです!」
「柴、原…?」
「ついでに言うなら、ウジウジしてる会長も上の空な会長も…大っ嫌いです!」
柴原の口からはどんどんと今の俺に対する言葉が出てきた。
その間ずっと、柴原は下を向いたまま目線を合わせない。
「だから……だからっ…
早く行ってください…!!」
決して顔を上げることはなかったけれど
いくら鈍い俺でもわかった。
柴原は俺の背中を押してくれているんだって。