狼彼女のお気に入り
ふぅ…
案外天ぷらって色々必要なんだな。
今度からは材料ぐらい、覚えておこうかな…
レジ袋を持ってそんなことを考えながら帰り道を歩いていると、ふと、放課後のことを思い出した。
そういえば、あいつら……あそこで何してたんだ?
また校則違反をしてなきゃ良いんだが…
まぁ、篠田は置いておくとして、あの一年は校則を破るようなやつには見えなかったからな。
…とりあえず明日、聞いてみるか。
そう思い、ふと空を仰いだ。
ポツリ
水滴が頬に落ちる。
「やばいっ…」
あっという間に雫は大粒の雨へと変わり、地面を叩きつける。
俺は急いで近くにあったコンビニに駆け込んだ。
幸い、すぐに駆け込んだからか、制服はほとんど濡れずに済んだ。
改めてコンビニの中から空模様をうかがう。
空はまだ明るいから、少し経てば止みそうだ。
…それにしても、先に愛奈を帰したのは正解だったかもしれない。
たぶん今頃、愛奈は家に着いた頃だろう。
雨に降られてなきゃ良いんだが…
そんなことを思いながら、やっぱり少し濡れていた制服のブレザーをハンカチで拭く。
…ん?
……あれ、は………
ふと目に入った黒い車。
確かあれは……“リムジン”ってやつだ。
妙に車体が長い。
その車の扉が開いて、中から人が出てきた。
雨の降りしきる中、遠目にもその姿が確認出来る。