狼彼女のお気に入り
「…すまなかったな。それから………ありがとう。」
俺は生徒会室を飛び出した。
下を向いたままの柴原を振り返ってみたけど、相変わらず表情は確かめられなくて
もう一度だけ、少し震える柴原の姿を確認して、俺は走りだした。
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走りながら携帯で電話をかける。
電話口からは無機質なコール音が鳴るだけで
「くそっ…!!」
俺はどうしたらいい…?
どうすれば篠田に……
「───はい。」
「え…?」
今たしかに……
声がした…よな?
「…どちら様ですか?」
「あ、あの…」
でも……篠田、じゃない。
「俺…楠木翔と言います。柳蘭高校で生徒会長をしています。」
「あぁ…憐がいつもお世話になってます。
………憐の兄です。」
低く響く声が俺にそう告げた。