優しい風〜隠れ美少女の初恋〜【完】
胸がチクチクと痛い。



「…私と一緒じゃ、嫌だった?」



基槻に背を向けたまま呟く。

すると基槻は、「それは俺が訊きたい」と言う。



「…どういう事?」



私は荷物を抱えて振り向く。



「客室の方が良さそうだったから」



「違うよ!そうじゃないの…」



荷物を置き、ベッドに座る基槻の前に座る。

部屋に2人きりなんて、私が熱を出して以来だ。

付き合い始めてから、そんなに日数が立ってない事を実感した。

季節は変わってないし、当たり前なんだけど。



「基槻と一緒の部屋は嬉しいよ?
でも、良いのかな?って…。緊張するし、ほら…男女が同じ部屋なんて、あまり聞かないから…」



私の何とも幼いような、古くさいような発言に、基槻は「ブハ――ッ!」と、吹き出した。
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