優しい風〜隠れ美少女の初恋〜【完】
【第二章】―交わった心―
「お兄ちゃーん…っ…」
仕事の途中に迎えに来てくれた、お兄ちゃんに校門とか関係なしに抱き着いた。
止めどなく流れる涙の理由(わけ)は、自分でもわからない。
けど、久しぶりに甘えたお兄ちゃんの温もりは、今も昔と変わりなくて……温かい。
本当は“仕事に行かないで”と、言いたい。
でも実際は言えない。
家に着き、玄関先でお兄ちゃんと別れ、私は鍵を開けた。
敷居は段になってる為、私はそこに腰掛けてローファーを脱ぐと、また涙が溢れた。
私の背中を包むのは、真っ暗な、冷たい廊下。
「ふぇ…んっ…」
どうして、両親が居ない事を、今になって、私は気にするのだろう。
風邪で弱ってるから?
誰でも良いから会いたい…―
誰か私を抱き締めてよ…――。