TIME
あ、そうだ。

誰か来てるんだった。

「…そこにいるのは、誰?」


あたしは、その人が来てからだいぶたって、
はじめて声を発した。

寝てると思ったらしく、少しびっくりしているようだった。


「り…あ。」


綺麗な声。
忘れられない声。
和樹の声だ。

まだ、あたしは和樹のことが好き。

たった一言なのに、
愛しさがこみ上げてくるんだ。

そんな、優しい声であたしの名前を呼ばないで。


下唇を噛み締める。
それでも震える。

嗚咽を必死で抑える。

和樹の顔を見ないように、
背ける。
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