ffに愛して
げ、木下翔。
気安く名前で呼ぶなっての。
「なに?俺に会いたくなったとか」
うざっ、こっちは部活中なのに。
「はいはい、そういうのメンドイ」
適当に受け流して、階段を上ろうとしたとき。
―ガシッ
不意に手首をつかまれた。
ちょうど骨のあたりをつかまれて痛い。
でも、そんなことはお構いなしに
どんどん力が強まっていく。
「い、痛いよ…」
じわじわと涙が込みあげてくる。
「なにその顔?誘ってんの?」
違う、そんなんじゃない。
誰か助けて、お願い…
「奏音、拓君…」
その瞬間、木村の顔がゆがんだかと思うと、
力が緩まった。
私はすぐに手を振り払い
階段をのぼった。
「先輩、どうしたんですか?」
階段をのぼったところで、声をかけられた。
「大丈夫だよ。あくびしただけ」
「ウソはやめてください。
手、痕(あと)ついてますよ」