ffに愛して
おそる、おそるつかまれた手首を見ると…
くっきりついていた。
木村のつけた痕が。
「いいの、気にしないで。
ほら、合奏の準備して」
どうしよう。
怖い、ものすごく怖い。
足もとは震えてるし、握った拳は
じっとりしてきた。
全員に声をかけ、音楽室に戻ると。
「寧々っ!」
そう言って奏音が駆け寄ってきた。
「木村に絡まれたんだって?
気をつけてね、アイツだけには…」
奏音は全て知っていた。
あの後、心配になって私と同じ
クラスの子に聞いたんだって。
「大丈夫っ
それより合奏、合奏♪」
私は傷ついていないフリをした。
首を左右に振って自分に言い聞かせた。
今は、部活に集中しなきゃ。
乾いたくちびるでマウスピースを加える。
アイコンタクトで指揮者に合図を送ると、
軽やかな指揮棒の動きに合わせて
ベルから音符がこぼれだす。