空を散歩する
誰にも届かない心の叫び。
でも俺が、声にして叫ばなかったのは、聞こえたからだ。
振り絞るような、
泣き声が。
「ウック!ウッ、ウッ!」
しゃくり上げる魔女、もとい、沢村雪乃は泣いていた。
雨だか涙かわからないが、人ん家の前で泣いていることだけは確かだ。
しかし問題は……。
どうしたらいい?
自慢じゃないが、泣く女の扱い、あらため、女性の扱いには慣れてはいない。
彼女はいた。
ただ一緒に勉強するだけで、そういう、なんだ、ほら、そっち方面のことはなかった。
だから泣かれても困る。
ずっと手を掴んで離さないし。
取り合えず、これ以上は濡れないように傘を差したが、気のきいたセリフは出てこない。
代わりに、
「……い、なの」
「え?」
「わたしのせいなの!」