空を散歩する
「これ、空から取ってきたの」
サラリと言ってのける、沢村雪乃。
「まずいいか?空からってなんだよ?」
俺が言い終わらないうちに、
「なんだってなによ!わたしが飛べるの知ってんでしょ!」
「なんだよお前、怒りっぽいやつだなぁ」
嘆きつつ、驚いてもいた。
こいつ、学校では地味な感じなのに。ま、空を飛んでた時はいい顔してたけど。
「とにかく取ってきちゃったの!で、この子も初めは元気だったんだけど……」
「お前、ペット泥棒じゃないか」
「だって可愛かったから。でも少しずつ光が弱くなって、この子も眠る時間が多くなって」
「それで雨がやまないと?」
そう尋ねると、コクリと頷く。
雨に濡れるので、すでに龍入り水晶は、沢村のポケットだ。
二人の間には、電信柱の弱い電灯と、強い雨が。
「で、どうしろっていうんだよ?」
「一緒に行って」
「どこへ?」
「空」