空を散歩する
「静かに!」
わたしは後ろの臆病者を一喝した。
風だ。
風を読み、
風に乗る。
それを誤れば、東京タワーの高さから地面に急降下する恐れもある。
一人だけなら空を闊歩できよう。
だが、重い荷物(お荷物、あ、わたしから頼んだんだ)と重い気持ちも一緒に持ち上げないといけない。
まだ。
まだダメ。
いつしか、雨音も聞こえないくらい、辺りが静寂に包まれる。
……くる。
大きいのが。
これで一気に駆け上がろう。
空の国を目指して。
「行くわよ!」
合図とともに、足首をかすめる風に、体ごと乗った。
よし!
飛んだっ!