空を散歩する


「で、でも……」


我ながら、なんと情けない声だ。


「ここまで来たら大丈夫。たくさん風を集めて、もう風に乗ってるから」


「風を操るのか?」


「うーん、わたしにもよく分からないんだけど。感覚かな?」


「感覚って……」


そう呟きながらも、なんとか体を起こす。


細い頼りのない棒が、それでも頼りなのだが、足の裏が、見えない確かなものに押し上げられているようだ。


これが風だろうか?


怖々、下を見たが、もう明かりすら見えない。


少し雨脚は弱まったようだ。


「そんで、空に国なんてあるのか?」


「なによ、信じてないわけ?」


「いや、そういうわけじゃないけどさ」


「もうすぐ着くわよ、ほら」


沢村が天を仰いだ。


そこから、一筋の光が下りていた。真っ暗な空に差す、希望の光。


[ここですよ]


そう言っているように。



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