空を散歩する
「おい、サリナムって誰だよ?」
オレは前を行く、沢村雪乃を足で小突いた。
手は後ろで、綿菓子みたいなフワフワしたやつで縛られてしまった。
これが見た目に似合わず頑丈だ。
「知らないわよ!」
案の定、キッと睨んで振り返る、雪乃。
やはり怒りっぽいらしい。
「サリナム様は、この空の国[スイチャーズ]をおさめる神ではないか!貴様ら、そんなことも知らんのか?」
黒い羽を揺らしながら、背筋を伸ばしてあるく姿はまるで……。
「SM嬢みたいだな」
「SM?なんだそれは?」
「なんでもないの!でもちゃんと返しに来たんだから、もう返っていいでしょ?」
「ダメだ!お前は自分が犯した重罪を知らぬのか?」
「ファーガルだか知らないけど、生きてるじゃない!」
「確かに生きてはいるが、このスイチャーズはファーガルが生み出す[風]で均衡が保たれている。それなのにお前が一つ盗んだがために、下界の天候は乱れ、大騒ぎだったんだぞ」
「やっぱりわたしのせいだったんだ…」
「サリナム様に許しを乞うがいい」