空を散歩する
いともアッサリ、携帯を覗き込んで、もう顔すら上げないサリナム君・8才。
「雨も止めてくれるんでしょ?」
「止める止める!」
「良かったぁ」
ホッと胸を撫で下ろしたわたしは、先輩を手招きし、
「気が変わらないうちに」
と、足音を忍ばせて宮殿を後にしようと……。
「おい雪乃!」
ギクリ!
「ファーガル連れていけよ」
「え?」
「雪乃がいいみたいだし」
振り返ると、こちらを涙目で見送るファーガルが。
「でも、いいの?」
「その代わり、時々、散歩させに来いよ。そっちの空じゃ狭いから」
「うん。わたしもここなら自由に飛べる。空を散歩できるもんね。おいで!」
両手を広げて迎えると、凄いスピードで飛び込んできた。
さぁ、帰ろう!