空を散歩する


「しっかし、よく降るなぁ」


自宅の二階から、真っ暗闇の街並みを……それすら見えない。


シャー。


カーテンを閉めかけた手が止まる。


目を凝らす。


電信柱の影に向かって。


「……あ!魔女!」


俺は部屋を飛び出した。


つま先にスニーカーを引っ掛けて玄関から出たが、傘を忘れて取りに戻る。


なぜか手が震えて傘が開かない!


急がないと。


空で見失った時と同じように、消えてしまうんじゃ?


半開きの傘を差して、向かいの電信柱に走った。


そこに、


魔女はいた。


フードつきのカッパを着てはいるが、雨に打たれる、空飛ぶ魔女、沢村雪乃。


でも待てよ?


こいつ……ここでなにしてるわけ?



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