大切以上。
取っ手に腕をひっかけて、
萌の部屋のドアをあける。
「……」
久しぶりに部屋のなかを見たけど、相変わらず。
ベッドと、小さな机。
それだけおかれた、小さな箱。
そんな部屋。
「ほんとに、なんもない…」
思わず、苦笑がでる。
そっと、ベッドに萌をおろして布団をかけた。
久しぶりに、萌の顔をまじまじと見る。
色白で、疲れてるときは青白いくらいだから、ほんとに心配になる。
こう見ると、幼さがまだ残った、甘い顔をしてる。
だけど雰囲気があまりにも大人らしいから、気づく人はあまりいないんだろう。
「甘えればいーのに…」
ふと出る言葉は、いつも思ってること。
いつも。
ひとりでかかえて、苦しんで。
そんなそぶりも見せずに。
領が気づくと、支えられてて。
ふと目を向けると、萌がひとりで戦って。
「しっかりしなきゃな、俺が」
俺が。
こいつを守ってく。
そっと、目にかかる前髪をよける。
「ん…、」
萌が薄く目をあける。
「悪い。起こした?」
「領…?」