先生に囚われて
「先生、この後授業ないんですよね?先輩が足怪我してるみたいで。保健室まで付き添ってくれませんか」

雅先輩を指差しながら私の口から出る言葉の数々に、先輩2人は目を見開いて動揺した。


「おい、大丈夫か?」

窓から身を乗り出してりぃ君が怪我人、雅先輩の様子をうかがう。

「え?……怪我人って、私?」

だけど、雅先輩は何がなんだかさっぱり掴めない状況にオロオロするばかりだった。


「雅先輩が1人じゃ歩けないみたいなので、先生、手貸して下さい」

「ん、わかったからお前らそこ動くなよ。今行くから」


りぃ君が窓から姿を消したのを確認して、後ろを振り返った。



「雅先輩、大丈夫ですか?」

そう言いながら、さっきから地面に座り込んでいる雅先輩に手を差し出す。


「は?え、う、うん。大丈夫だけど……」

戸惑いながらも私の手を握って起き上がる雅先輩は、しっかりと自分の足で立っている。


その足に怪我の様子は見られない。



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