先生に囚われて
「え?そ、そうなんじゃない?」

まあ、ここが静かな事くらい先輩たちは百も承知だろうけど。

「だから、先輩たちもこの場所を選んだんですよね?」

こっちを見ているようで、いまいち視線が噛み合わない二人の先輩の目を、それでも見つめる。


「でもその分、話し声って結構聞こえるみたいですよ」


誰が言ってたかなんて、きっと想像がついてるだろう。


「知ってましたか?佐伯先生がいたあの窓の開いてるとこ、数学の教科室なんですよ」

「え……」

と小さく聞こえた呟きは、この場で唯一、りぃ君とそんなに関係のない雅先輩。

案の定、残りの2人は声も出ないようだ。


「雨の日以外は、佐伯先生ってあの部屋にいる時に必ず窓開けてるらしいですよ。赴任してきたこの4月からずっと」

一つだけ窓の開いた2階の部屋を指さす。


「なので、あの窓が開いてるって事は佐伯先生が部屋にいる可能性が高いって事です」


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