先生に囚われて
「歌、大丈夫だ」

耳元で私にしか聞こえないくらい小さな声で囁いてから、体勢はそのままに雅先輩を見る。


「それです」

「それ?」

「2人の間に何かあるかもって思った理由です」



震える手で雅先輩から見えないようにりぃ君のシャツを握る。

……それって?

なに?


「サエちゃんって生徒にとっても人気ありますよね」

「さあ、そうか?」

「そうですよ。顔は格好よくて大人な雰囲気で憧れるけど、歳も近いから話しやすいし親しみやすい」

「どうも」


のらりくらりと返事をするりぃ君に、雅先輩はしっかりとした口調で話しかける。



「だけど、教師ってことをちゃんと分かってる」


………え。


「女生徒には必要以上に近づかない。自分から触ったりなんか絶対にしませんよね?」


そうだったの?



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