先生に囚われて
「自分にとって一番大切なものを守るためには、他を切り捨てることだってする。優先順位は間違わない」


顔は雅先輩の方を向いたまま、手が私の頭を軽く撫でる。

「さっきのこいつを守るのには教師って立場を捨ててでも、ああしてやりたかった。他の生徒の目の前でも構わず抱き締めた」

「……先生……」

「だからバレたこと後悔してねぇし、隠す気もない」


肩を震わす私の頭を優しく何度も撫でながら、雅先輩に言い切ってしまった。

ばかじゃないの。

なんで、なんでそんなこと言うの。

なんでそんな……、涙が出るくらい幸せなことを言ってくれるの。



涙で滲む視界でりぃ君を見上げていると、


「なに泣いてんだよ」

少し困ったように片眉を下げて笑ったりぃ君がおぼろ気に見えた。


そんな表情でも、やっぱりかっこいいその顔に少しムカついて、

「……自分が泣かせたくせに」

と悪態をついてしまった。



「お前なぁ……」

「か……、かっこいい!!」


呆れた声のすりぃ君の言葉に、興奮した雅先輩の絶叫に近い声が被る。



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