先生に囚われて
知らなかった君の姿
洋風の落ち着いた部屋に似つかわしくない、お線香の香りが立ちこめる。
私はその部屋で目を瞑りじっと座っていた。
胸元に無意識のうちに手が行ってしまう。
忘れたくないモノがそこにあるから。
写真の中のあなたは、今も眩しい笑顔でこちらを見ている。
どんなに忘れたくないと願っても、記憶は薄れていくもの……。
いつかこの笑顔まで忘れてしまうのかと思ったら、
流れ続ける涙を、止めるすべなど有りはしない。
何十分、何時間この場所にいたのかな。
窓の外はすっかり日も落ちて、空はすっかり藍色に染まっていた。