先生に囚われて
「俺は恭弥!よろしくな、歌」

「……きょうや」

「呼び捨てかよ」

歳下の女の子に呼び捨てで名前を呼ばれるのは少し納得がいかなかったけど、可愛いからまぁいいかと思った。


そのあと歌は楽しそうに砂場でトンネルを掘ったり泥だんごを作ったりしてたけど、たまに思い出したように門を振り返っていた。

迎えのこない門の向こうをひたすら眺めるその行為はなんて切ないんだろう。


そんなことをしなくてもいいくらい、ここを好きになってくれたらいいのに。


「……歌!固い泥だんごの作り方教えてやるよ!」

「え?かたいの?」

そう言って俺の手元の泥だんごを一所懸命に見つめていた。


「わあ!すごい!ぴかぴかだぁ!」


出来上がった泥だんごを歌に渡すと宝物を見るように目を輝かせて、ずっと眺めていた。

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