先生に囚われて
小さい歌はすぐに俺に懐いて、俺の後ろをぴょこぴょこと着いて回った。



「きょうや見て!うたの名前上手にかけた!」

ヨレヨレのひらがなで書いた『うた』の文字はとても歪で愛らしかった。


「お!すげえじゃん!じゃあ今度は俺の名前も書いてよ」

「うん!いいよー!」

よ、の字が鏡文字みたいに反対に円を描いているし小文字にもなってないけど、それでも何とか完成したそれを満面の笑みで俺に見せた。


「できたー!」

「すげえな歌!上手に書けてる」

「へへっ、きょうやとうたは“う”が同じだねー!」

「う?」

「うん!同じだからすぐに書けたよ」

「そうだな、同じだ!」


妹のように可愛い歌と小学校から帰ってきたら毎日遊んだ。

ひらがなやカタカナも練習して、数も100まで数えられるようになった。

そうして俺が中学生になるまでほとんどの時間を一緒に過ごしていた。
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