先生に囚われて
渡り廊下を抜けたとき、体育館のほうから歩いてくるジャージの集団の中に颯汰郎の姿が見えた。


「歌!どうしたんだ?そんなに急いで」

「あ、颯……!あの私っ」

「……あ〜、はいはいいってらっしゃい〜」

何も言ってないのに納得したように、突然軽く手を振って送り出してくれた。


「え?あ、うん……じゃあまたお昼に」

「はいよー」

なんか、颯にもなぜか知られていることがある気がする。

なんでだろう。

颯汰郎に別れを告げて周りを見ると、相変わらず3年の女子からの視線を感じた。

雅先輩たちグループもない今は、前ほどひどくはないけど。



屋上から特別教室のある校舎までの距離をほとんど走りっぱなしで来たので息が上がってそろそろつらい。

はあっ、やっと……着いたっ。

肩が上下するのも息を整えるのも忘れて、ノックもせずに数学教科室の扉を勢いよく開けた。


「……お前なぁ、他の先生いたらどうすんだよ」


わずかに声が笑いながら、窓を開けて煙草を吸うりぃ君が呆れたようにこっちを見ている。

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